アトピー性皮膚炎 (ステロイド剤について)

ステロイドホルモン 1

ステロイドとは、ステロイド核という化学構造をもつ化合物の総称です。
アトピー性皮膚炎の治療薬としてのステロイドは、いわゆるステロイドホルモンといわれるもので、 そのうちの糖質ステロイドといわれるものです。 このステロイドホルモンは腎臓の上にある副腎というところから分泌され、人間が生きるうえで重要な役割を 果たしています。

ステロイドホルモン 2

ステロイドホルモンを治療に使う主な目的のひとつに炎症を抑える ことがあります。
「炎症」とは人が自分の体を守るために起こした有害な刺激に対する防御反応です。 具体的には、細菌やウイルスなどが侵入したときにそれらを追い払おうとすることや、怪我ややけどなどで体が傷ついたときに 傷ついた部分を新しく作り直して古いものを処分することがあります。
症状としては、赤くなり(発赤)腫れて(腫脹)熱を持ち(発熱)痛み(疼痛)が あります。
炎症を化学的にみると、体に加わった刺激によって、反応をつかさどるいろいろな細胞が動き出し、 さなざまな化学物質が作られてとても複雑な反応が次々に起こります。

ステロイドホルモン 3

炎症が起こるときの重要な化学反応の ひとつに「アラヒドン酸カスケード」というものがあります。 これはひとの細胞の細胞膜に含まれるリン脂質からアラヒドン酸が作られ、結果として ロイコトルエン、プロスタグランジン、トロンボキサンなどサイトカインという炎症を担う化学物質が大量につくられる反応です。
ステロイドホルモンはこの反応の初めの部分、リン脂質からアラヒドン酸が作られる反応を強く抑えますので、炎症を抑える働きがとても強いことになります。

ステロイドホルモン 4

ステロイドホルモンはとても効果がある反面、副作用もいろいろあります。 しかしこの薬はすでに50年以上も使われ続けているため、副作用についてよくわかっています。そういう意味で安全な薬といっていいでしょう。
アトピー性皮膚炎とステロイドホルモンをめぐってはその効果と副作用が議論され続けています。
その理由のひとつに、アトピー性皮膚炎は命にかかわらない病気で、しかも子どもの場合は大きくなると自然に治まることが多いことがあげられます。
また、アトピー性皮膚炎の原因がはっきりわかっていないこともさらに議論に拍車をかけています。
そのような病気に大きな副作用を持つステロイドホルモンを小さな子どもに使っていいものか。子どもを持つ親なら誰でも心配になるのは当たり前でしょう。 しかし、ステロイドホルモンというとすぐ危険で使ってはならない薬であるとヒステリックに叫ぶ人のいるのもまた問題です。 薬は上手に使うもの。薬は人の痛みや苦しみを軽くするものです。

ステロイドホルモン 5  皮膚への副作用

塗り薬は飲み薬に比べて体全体に与える影響は、ふつうの使い方をする限りほとんど無いといってよいでしょう。
皮膚に起こる副作用としては以下のようなものがあります。

1. 細胞や膠原繊維(皮膚と骨や筋肉の間にある結合組織)が新しく増えないようになるために起こる副作用

  • 酒さ様皮膚炎 (血管が弱くなりひろがりやすくなる)
  • 皮膚萎縮 (皮膚が縮んでしわができる)
  • 毛細血管拡張 (血管が弱くなりひろがりやすくなる)
  • 創傷治癒遅延 (怪我のあとがなおりにくい)
  • ステロイド紫斑 (皮膚の下に出血し紫色にみえる)
  • 色素異常 (色素がつくられなくなる)

2.ホルモン作用によるもの

  • ステロイドざ瘡 (細菌が増えやすくなりニキビができやすくなる)
  • 多毛 (毛がのびやすくなる)

3.免疫抑制作用によるもの

  • 感染の増悪 (細菌や真菌が増えやすくなる)

ステロイドホルモンの誤解

色素沈着(肌が黒くなること)

ぬり薬のステロイドは皮膚の色素をつくるはたらきを抑えるため、肌の色はむしろ白くなります。 アトピー性皮膚炎は皮膚に炎症が起こっていますので、メラニン色素がたくさんつくられ、そのメラニンがしばらく皮膚の底のほうに残ります。 炎症が起こっている初期は赤くなっていてそれがわかりませんが、赤みが引いてしまうと黒いメラニン色素が目立つようになります。 ステロイドを使っていると赤みがすぐにとれるので、色素の沈着が急にできた様に見え、このことが「ステロイドで肌が黒くなる」と誤解されているのです。 この色素の沈着は、しばらくすると薄くなっていきますが、治療が十分に行われなく炎症が長い間続くとなかなかとれないことがあります。

ステロイド白内障

ステロイドホルモンを長い間のみ続けていると、角膜がにごって視力が悪くなる白内障が起こる可能性があります。 しかしぬり薬のステロイドは皮膚から吸収されても体の中で分解されてしまいますので、ふつうの使い方をしている限り体全体に影響を及ぼすことはありません。 もちろん最強のステロイドを全身に長い間使っったり、密封療法などの特殊な使い方をした場合は可能性は否定できなくなりますので注意が必要です。 アトピー性皮膚炎で見られる白内障は、ほとんどがアトピー性皮膚炎がとても重くなかなかうまく治療できていない患者さんに見られるアトピー性白内障です。