■ 総IgE値は測らなくてよい?【時流◆レベルアップ!吸入性アレルギー診療】


国立病院機構相模原病院・福冨友馬氏の解説−Vol. 3

時流2018年2月28日 (水)配信 呼吸器疾患アレルギー疾患小児科疾患耳鼻咽喉科疾患検査に関わる問題
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 総IgE値はアレルギー疾患以外でも上昇が見られることなどから、アレルギー検査としての意義に疑問の声もある。国立病院機構相模原病院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室室長の福冨友馬氏は「総IgE値は必ず特異的IgE値と同時に測定する」ことを勧めている。第4回総合アレルギー講習会の教育講演(2017年12月16日)と、福冨氏への追加取材の内容を紹介する。(取材・まとめ:m3.com編集部・坂口恵)

特異的IgE値との同時評価が重要
 総IgE値は、アトピー素因やアレルギー炎症の評価に用いられる。ただし、福冨氏によると、アレルギー疾患患者の場合、総IgE値が上昇しているケースが多いが、健康人 とのオーバーラップがかなり大きいこと、健康人との明確なカットオフ値がない。さらに、総IgE値が上昇しない喘息やアトピー性皮膚炎もまれではなく、アレルギー性鼻炎では高くない患者も多いという。

 また、福冨氏は「例えば、特異的IgE検査の前にまず総IgE値を測って、高ければ特異的検査を行うという使い方はできない」ものの、「総IgE値は必ず特異的IgE値と同時に測定する」そうだ。

 さらに「総IgE値が1万IU/mLを超えるような場合、個々の特異的IgE抗体価はクラス1-2の低抗体価で臨床的意義のない偽陽性反応が出やすい傾向がある。一方、総IgE値が50くらいと低い場合、特異的IgE抗体価がクラス1-2と低くても臨床的に非常に意義の大きい数字と考えられることもある」とし、両者を並行して評価することが重要と話す。

吸入性アレルギーに皮膚テストは必要か
 「I型アレルギー検査で最も優先されるのは、伝統的には皮膚テストであるとされてきた。一般的に皮膚テストの方が真の体の反応に近いため、臨床的有用性が高いと考えられている」と福冨氏。ただし「血液アレルギー検査の簡便さと日本国内での広い普及状況を考慮したら」と前置きした上で、「吸入性アレルゲンの血液抗原特異的IgE抗体検査に関しては非常に感度が良いことから、現時点では喘息や鼻炎の診療においてルーチンの皮膚テストは省略可能と考えている」との見解を示す。

 なお、ヨモギについては皮膚テストにのみ陽性を示すケースもあるそうだ。この他、吸入性アレルギーにおいて皮膚テストを考慮すべき条件としては、「特殊な職業性アレルゲン、特殊なカビや昆虫など、通常の血液検査では評価できないアレルゲンが疑われる場合」を挙げた。

【時流◆レベルアップ!吸入性アレルギー診療】
Vol. 1 IgE検査はどれも同じ?
Vol. 2 汎用IgEパネルで「やみくも」検査を回避!
Vol. 3 総IgE値は測らなくてよい?
Vol. 4 (2018年3月7日公開予定)