■ ジフテリアが海外で急増 緊急ワクチンキャンペーンを実施


2018年2月5日
ジフテリアとは1)
ジフテリア菌の感染による上気道粘膜疾患

感染経路: 飛沫感染
臨床症状: 血液を帯びた鼻汁、鼻孔・上唇 のびらん、偽膜形成、頚部リンパ節炎、 嗄声・犬吠性咳嗽、呼吸困難、気道閉塞
死亡率: 5-10%
治療: 血清療法、抗菌薬
予防: ジフテリア含有ワクチン (DPT-IPV、DTなど)
ジフテリア菌の感染によって生じる上気道粘膜疾患。患者の咳などから飛沫感染する。発熱・咽頭痛・嚥下痛などで始まり、血液を帯びた鼻汁、鼻孔・上唇のびらん(鼻ジフテリア)、扁桃・咽頭周辺に白〜灰色の偽膜形成、頚部リンパ節炎(扁桃・咽頭ジフテリア)、嗄声・犬吠性咳嗽、呼吸困難、気道閉塞(喉頭ジフテリア)などがみられる。合併症は心筋炎がもっとも予後不良。死亡率は5-10%。治療には、ウマ由来の血清療法や抗菌薬を用いる。予防がもっとも重要で、ジフテリア含有ワクチン(DPT-IPVやDTなど)がある1)。

中南米諸国やイエメン、バングラデシュでジフテリアが急増している。関係各国やWHO、UNICEFなどは、緊急ワクチンキャンペーンや治療薬の供給など感染拡大阻止の対応に追われている

図. 世界のジフテリア発生状況(報告数が多い国)
2017年12月現在


文献2-4)より

ジフテリアの報告が海外で急増している。2017年の患者報告数は、ブラジルで42例(うち死亡1例)、ドミニカ共和国で3例(死亡0例)、ハイチで152例(死亡率10%)、ベネズエラでは609例(うち検査診断例198例)となっている(2016−2017年の死亡率は21%)2)(図)。イエメンでは、4カ月余りの間に333例(うち死亡35例)が報告された3)。バングラデシュでは、わずか1カ月余りで804例(うち死亡15例)が報告されており(図)、これはミャンマーからのロヒンギャ族難民が暮らすCox’s bazarで発生し、感染は急速に拡大している4)。各国とも患者の多くは、小児やワクチン未接種者が占めている。関係各国・WHO・UNICEFなどは、感染拡大を阻止するために協力して、緊急ワクチンキャンペーンや治療薬の供給、サーベイランス強化などの対応に追われている2-4)。わが国でも、感染症専門医をバングラデシュに派遣し国際協力を行っている5)。

WHO
WHO ポジション・ペーパー (2017年8月改訂)6)
ジフテリアワクチン

すべての小児に計4回以上の接種推奨
(初回免疫3回+追加免疫)
未接種・接種未完了者には、3回接種の完了を推奨
WHOでは2017年8月に、ジフテリアワクチンのポジションペーパーを11年ぶりに改訂したところであった。同指針では、すべての子どもたちにジフテリア含有ワクチンを計4回以上接種することと、未接種者や接種未完了者には3回接種完了を推奨している6)。欧州・ECDCでは、旅行者からジフテリアが持ち込まれることに警戒を示しており、ワクチン接種の重要性を強調するとともに、欧州各国間でみられるジフテリアの検査診断能のギャップ是正や治療薬の供給体制の整備が必須としている7)。

参考文献
国立感染症研究所: ジフテリアとは
WHO/PAHO: Epidemiological Update Diphtheria. 15 Dec. 2017.
WHO: Disease outbreak news(Yemen). 22 Dec. 2017
WHO: Disease outbreak news(Bangladesh). 13 Dec. 2017.
厚生労働省: 報道発表資料. 平成29年12月26日.
WHO: Summary of WHO Position Paper on Diphtheria Vaccines, Aug. 2017.
ECDC: Diphtheria outbreaks in Yemen and Venezuela . 24 Nov. 2017.