■ 塗り薬を混合するときの注意点とは?















塗り薬を混合する時に注意すべきこと。

それは「基剤の性質」だ。



基剤は、大きく分けて4つに分類できる。

それが「水溶性」、「油脂性」、「ゲル」、「乳剤性(クリーム)」である。



これらには相性があり、「混合可能なもの」・「混合は適さないもの」に分類することができる。

そのため、塗り薬を混ぜるときは、基剤の相性を考慮に入れる必要があるのだ。



【補足】

基剤(添加物)とは簡単に説明すると、その薬を形作る原料のことだ。

つまり、クリームなのか軟膏なのかといった性質を決めたり、保存期間を長くしたりするなどの働きをするのが基剤である。



混合の相性が悪い組み合わせとは

基本的に、同じ性質の基剤であれば混合しても問題ないと考えて良い。

例えば水溶性基剤と水溶性基剤、油脂性基剤と油脂性基剤同士で混ぜる場合だ。



ではどの基剤同士で混ぜると良くないのか。



1:ゲルは混合できない

ゲルは他の性質の基剤と混合することができない。

理由は以下の通りである。



【ゲルを混合してはいけない理由】

◆相分離が起こるため

→混ぜた成分が分離してしまうという意味



◆pHが変化するため

→例えば酸性の薬に対して酸性に弱い薬を混ぜると、薬の状態が不安定になる



2:乳剤性(クリーム)は混合に向かない

乳剤性基剤は、基本的に混合に向かない。

なぜかというと、混合してしまうと乳化が破壊されるためだ。



乳化について、簡単に説明しよう。

乳剤性基剤にはO/W型(水中油型)とW/O型(油中水型)の2種類がある。

O/W型は水の中に油が溶けているもの。

そしてW/O型は油の中に水が溶けているものだ。



通常、水と油は混ざることはない。

しかし本来は混じり合わない水と油を混ぜることは可能だ。

それが乳化という方法である。

簡単に言ってしまうと乳剤性基剤は「通常では混ざらないもの同士を混ぜたもの」と言える。



つまり乳化が破壊されてしまうと、薬としての効果を適切に発揮できなくなる可能性があるのだ。

そのため、乳剤性基剤と他の基剤の混合は推奨されていない。



*ただし、例外がある。

1:O/W型は組み合わせによっては、O/W型または水溶性基剤と混合可能。

2:W/O型は組み合わせによっては、W/O型または油脂性基剤と混合可能。











基剤に注意すべき塗り薬

前述の通り、塗り薬を混合するときは基剤の組み合わせに注意が必要だ。

しかし、混合する以前に厄介なことがある。

それは何かというと、薬剤名と基剤が一致していないことがあるのだ。



例えばトプシムクリームは名前にクリームとついているが、基剤はゲルである。

インテバン軟膏も名前に軟膏とついているが、基剤はゲルだ。

またヒルドイドソフト軟膏は名前に軟膏とついているが、基剤はW/O型乳剤性基剤(クリーム)である。



このような落とし穴があるので、混合する際は「この薬の基剤は何か」をきちんと確認するべきだろう。

(添付文書またはインタビューフォーム、メーカへの問い合わせをして確認)



【注意すべき薬剤】

◆インテバン軟膏:ゲル

◆トプシムクリーム:ゲル

◆ヒルドイドソフト軟膏:W/O型乳剤性基剤

◆パスタロンソフト軟膏:W/O型乳剤性基剤

◆ザーネ軟膏:O/W型乳剤性基剤

◆ユベラ軟膏:O/W型乳剤性基剤



なぜ混合して塗る薬を使うのか

ここまで読み進めて、「混合して問題が生じてしまうなら、混ぜなければ良いじゃないか」と思った人もいるかもしれない。

確かにそれは一理ある。



それにもかかわらず、なぜ塗り薬を混合することがあるのか。

大きな理由は、混合した塗り薬の方が使いやすいからだ。



例えば「2種類の薬を交互に塗るように」と指示された場合を考えてみよう。

容易に想像できると思うが、こうした塗り方は非常に手間がかかる。

途中で塗り方が雑になり、ちゃんと塗ることができない可能性が十分に考えられるのだ。

その結果、治療効果の低下を引き起こしてしまうだろう。



これが塗り薬を混合する理由だ。

つまり、混合して安定性が低下したり薬の効果が多少落ちたとしても、使いやすさの向上を期待して塗り薬を混合するのである。