■ 小児呼吸器感染症 ガイドライン2017変更 |
今回は、小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017の変更点を書きます。 そして、そこから見える医学の進歩についても触れます。 このページの目次です。 [目次を閉じる] 1 小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017の変更点 2 細菌性肺炎に対する経口抗生剤の変更 3 細菌性肺炎に対する注射抗生剤の変更 4 マイコプラズマ肺炎に対する変更 5 百日咳の診断に関する変更 6 医学の進歩について 7 まとめ 小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017の変更点 おおざっぱに書いてしまうと、変更点は3つあります。 肺炎に対する合成ペニシリン(サワシリン、パセトシン、ビクシリン)が大きく見直され、治療の第1選択になりました。 それにともなって、メイアクトやフロモックスのような経口セフェムの立ち位置が後退しました。 マイコプラズマ肺炎については、変わっていません。 百日咳の診療が大きく変わりました。 Mindsというガイドライン作成手引きに沿った、新しい形になりました。 Mindsに関しては別記事にするとして、残りの2つについて、細かく見ていきます。 細菌性肺炎に対する経口抗生剤の変更 軽症の細菌性肺炎に対する経口抗菌薬の第一選択がAMPCになりました。 小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011では経口セフェムも第一選択でした。 しかし、以下の4点を理由に、経口セフェムは第2選択薬になりました。 経口セフェムは意外と血中濃度が上昇しない。 AMPCはCFPN-PIやCDTR-PIと有効性に差がない。 肺炎球菌ワクチンのおかげで、ペニシリン耐性肺炎球菌は減少している。 効果が同じなら、狭域抗生剤のほうが耐性株を作りにくい。 BLNARを想定するなら第2選択薬である経口セフェムもよいですが、その場合もガイドラインで推奨されているのは広域セフェム増量投与です。 通常量の広域セフェムは、ガイドラインから姿を消しました。 分かりやすく言うなら、「細菌性肺炎を外来で治療するなら、サワシリンやパセトシンを処方するように」というようになりました。 メイアクトやフロモックスを出す機会が減ったと私は感じました。 なお、サワシリンやパセトシンが無効であった場合は、マイコプラズマをカバーするか、BLNARを狙ってTBPM-PIやTFLXを推奨しています。 細菌性肺炎に対する注射抗生剤の変更 中等症の細菌性肺炎に対する注射抗菌薬の第一選択がABPCになりました。 ABPC/SBTや注射セフェム(CTXやCTRX)は第2選択薬となりました。 この理由も、先ほどサワシリンやパセトシンが第一選択となったのと同じです。 スルバシリン(ユナシン)やセフォタックス(クラフォラン)を使う機会はぐっと減るのではないでしょうか。 代わりに、ビクシリンをよく使うようになるでしょう。 ビクシリンが効かなかったときに、スルバシリン(ユナシン)やセフォタックス(クラフォラン)を使うというのが、ガイドラインでは推奨されています。 マイコプラズマ肺炎に対する変更 「ガイドライン2017」の刊行にあたり、というページの中に、マイコプラズマ肺炎のことがありましたので、何が変わったのかを考えていたのですが、結局第1選択薬はマクロライド系抗菌薬ということです。 ガイドライン2011と変わっていません。 ですが、2013年をピークに、マクロライド耐性マイコプラズマは減っているようです。 ガイドラインには書かれていませんが、よりいっそうマクロライドでの治療を第1にしましょうというメッセージを暗に感じさせる文章でした。 百日咳の診断に関する変更 百日咳LAMP法のおかげで、百日咳の診断が大きく変わりました。 詳しくは、こちらの記事を読んでください。 関連記事百日咳の検査。小児呼吸器感染症ガイドライン2017と百日咳LAMP法。 2017.03.07百日咳の診断が大きく変わったことで、治療スタイルも変わりました。 ある意味、この変更こそ小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017の最大のウリといっても過言ではありません。 医学の進歩について 2016年11月に小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017が刊行され、まだ4か月しかたっていない状況ですが、もう新たに変わってしまったこともあります。 たとえば、126ページにインフルエンザに対するタミフルの使用が書いてあります。 生後12か月未満には保健適応外となっていますが、現在は保健適応があります。 詳しくはこちらの記事に書きました。 関連記事タミフルが1歳未満で使用可能に!臨床現場で何が変わる? 2017.01.19 また、75ページにはニューキノロン系に関しては肺炎マイコプラズマは適応菌種に含まれていないとありますが、現在は含まれています。 これもこちらの記事に書きました。 関連記事肺炎マイコプラズマにおけるオゼックスの適応拡大。現場はどう変わる? 2017.03.11 新しいガイドラインが出るということは、それだけ医学が進歩したということですから、とても喜ばしいです。 ですが、出たばかりのガイドラインがもうすでに古いものになっていってしまうのは、勉強する側としてはとても大変です。 |