■ 前胸部叩打法(その2?)とfist pacing [CPRの基礎]

前胸部叩打法(その2?)とfist pacing [CPRの基礎]
 前回の記事で前胸部叩打法についてAHAとERCのガイドライン、そしてCoSTRを紹介しました。

 今回はCoSTRの別のところを紹介しましょう。何だかんだ言って結局2010ガイドラインの事書いちゃっています(^.^)。そういえば村上春樹さんがG2010と言う電子出版の会社を立ち上げるとか言っていましたね。

 さてCoSTRの該当部分です。原文を載せるのは疲れた??(と言ってもコピペするだけなんですが)ので日本語だけにしていきます。訳について???と思った方は、リンクを参考にして確認して頂ければと思います。

前胸部叩打法
 院外、院内を問わず、成人の心停止において、器具を用いない心肺蘇生法の変法(咳心肺蘇生、前胸部叩打法、握りこぶしによるペーシングなど)は標準的な心肺蘇生と比較して心拍再開率や生存率を改善するか?

科学に基づいたコンセンサス
 心室細動による院外心肺停止についての5つの前向き研究(LOE4)と院内の2つの研究(LOE4)では医療従事者が前胸部叩打法を行っても心拍再開しなかった。
 電気生理検査室中に発生した心室頻拍についての3つの前向き研究では、熟練の循環器内科医が前胸部叩打法を行ったが、1.3%が心拍再開したのみであった。病院内、病院外で発生した心室頻拍に関する6つの研究(LOE4)では、電気生理検査室以外で心停止が発生した場合、前胸部叩打法により19%の患者が心拍再開した。前胸部叩打法により不整脈が悪化した患者は3%で、虚血が長時間続いた場合やジギタリス中毒の患者に多く認められた。
 心静止についての3つの研究(LOE4)では、院内、院外を問わず目撃された心静止(p波が明らかに認められる場合)に対して医療従事者が前胸部叩打法を与えれば、心拍再開させる可能性があると報告されている。
 二つの研究(LOE4)と症例報告(LOE5)では、成人、小児共に合併症として胸骨骨折、骨髄炎、脳卒中、不整脈の悪化が報告されている。

推奨される治療
 前胸部叩打法は心室細動に対しては無効であり、目撃されていない院外心肺停止には用いるべきでない。前胸部叩打法は、除細動器がすぐ準備できない場合で、モニターが装着されている不安定な心室頻拍の患者に対して考慮しても良い。心房心室間の伝導障害によって発生した心静止を目撃した場合に、前胸部叩打法を行うことに対して推奨、禁止をする十分な証拠はない。

 検索していたらfist pacingについてオーストラリア蘇生協議会のガイドラインが詳しかったです。全世界の蘇生ガイドラインを調べたら、究極のオタクになっちゃいますね!!火星人の心肺蘇生なんてのが出てきたら、ムーの世界かも、、、、

 この論文には写真と心電図が載っています。叩くのに同期してQRSが出ています。すご〜い!!

 オーストラリアのガイドラインによれば、fist pacingとはペースメーカーが準備できるまでの間、胸をリズミカルにたたき続けることだそうです。3つの症例集積研究で有効である可能性があると報告されているとのことです。

 さてCoSTRに戻ります。

握りこぶしによるペーシング
 院外、院内を問わず、成人の心停止において、器具を用いない心肺蘇生法の変法(咳心肺蘇生、前胸部叩打法、握りこぶしによるペーシングなど)は標準的な心肺蘇生と比較して心拍再開率や生存率を改善するか?

科学に基づいたコンセンサス
 心停止患者に対して、この処置による効果を心電図モニターや脈を継続的に観察することが不可能な場合には特に、握りこぶしによるあるいは叩くペーシングを支持する証拠はほとんどない。心静止と徐脈について検討した6つの1例報告(LOE4)と1つの中規模の症例集積研究(LOE4)のエビデンスがある。

推奨される治療
 心停止患者に対して、握りこぶしによるペーシングは推奨されない。

 オーストラリアのガイドラインでも、心停止には触れられていません。「ペースメーカーが到着するまでの間、不安定な徐脈の患者で考慮されても良い(クラスB、LOE IV)」とのことです。