■ 小児心肺蘇生

APLS(小児心肺蘇生)
小児は大人のミニチュアではない!

小児の心肺停止は大人と違い、呼吸障害によることが多い

小児の心静止(心電図フラット)は、より積極的に治療する

静脈路がとれなくても、骨髄から薬を与えられる

【症例】
生後10カ月の乳児の具合が悪いと連れられてきた。顔色は土気色で、パッと見て重症だった。呼吸はなんとなく顎が上がり、脈はなんとか触知でき、研修医はホッとした。そこへ上級医が飛び込んできて、補助換気をしたと思ったら、「脈拍が遅すぎる!」といって、胸骨圧迫を開始した。
モニターはPEAで、下肢に骨髄路がとられ、あれよあれよという間に蘇生が進められ、患児は息を吹き返した。その蘇生術の若干10分間、手も足も出なかった研修医は途方に暮れて現場を眺めていた…(泣)

1.エッセンシャルズ
■ 小児の心肺停止はたいてい呼吸停止によるもの。大人は心臓によることが多い

■ 呼吸不全とショックの同定に全力を挙げるべし

■ 小児の体格に合わせて、胸骨圧迫法を柔軟に使い分けるべし

乳児は指2本で乳頭線のやや尾側を押す。胸郭の厚みの1/3または4 cmの深さ


小児では、片手法または両手法で5〜6 cm(胸郭の厚みの1/3)まで押す

2.救急外来での対処
●BLS


●気道管理

■ 小児は呼吸管理が大事

■ バッグバルブマスクが持てれば気管挿管は慌てなくていい

■ 気管挿管チューブは年齢/4+3.5 mmのカフ付き挿管チューブを。カフ圧は20 cmH2O以下にする

■ 喉頭鏡のブレードはまっすぐのものを用意する

■ 乳幼児は頭が体に対して大きいため、肩枕を入れて胸骨柄の高さを耳の穴(耳たぶ)と同じ高さまで持ち上げること

■ 呼吸数は20〜30回/分

■ 気管挿管中に悪化したらDOPEを考慮
  D:Displacement(挿管チューブの気管からの脱落)
  O:Obstruction(チューブ閉塞)
  P:Pneumothorax(気胸)
  E:Equipment(バッグバルブマスクなどの器具の不具合)

●AED

■ 全年齢AED使用可。できれば乳児は小児用パッドを使用
  体重≧10 kg以上なら、成人サイズ(8〜10 cm)のパッド使用
  体重<10 kg以下なら、乳児サイズのパッドを使用する

■ 除細動1回目2 J/kg、2回目4 J/kg、3回目以降≧4 J/kg(Max<10 J/kgまたは成人量を超えないように)

●輸液

■ 末梢静脈穿刺に2回失敗、または静脈路確保に90秒以上かかる場合は、骨髄輸液路をEZ-IO(ドリル式骨髄輸液)で確保(脛骨粗面やや下の内側で平らなところ)

■ 輸液は乳酸リンゲル液または生理食塩水を

■ 小児の蘇生時には必ず血糖測定を行う。低血糖なら20%ブドウ糖2 mL/kg静注

■ 低血糖でない限り、蘇生初期にはブドウ糖液は使用しない

■ アドレナリン0.01 mg/kg静注または骨髄内投与する。気管内投与は行わない

■ 心肺蘇生時にはアトロピンは使用しない

■ 出血性ショックなら輸液チャレンジ。まず20mL/kg急速輸液
  →ダメならもう一度→ダメなら輸血考慮