小児の肥満・生活習慣病

小児期とくに幼児期に身についた生活習慣が、その人が将来、「メタボリックシンドローム」つまり生活習慣病になるかを左右している。

  1. 小児肥満の頻度
    最近小児の肥満が増え続けていると言われています。年齢別に見ると小学校入学時に20人に1人だった肥満が、現在は10人に1人とちょうど倍になっています。また、ここ30年で、男の子は3倍、女の子は2倍に増加しています。
  2. 肥満の定義と評価方法
    肥満とは、体脂肪が異常に増加した状態を指しますが、これを数値で表すにはいろいろな方法があり、いろいろな評価方法があります。成人の場合は通常BMI(Body Mass Index)を用いて評価されています。BMIは体重(kg)÷身長(m)で求めることができ、BMI22が理想的な体重とされ、BMIが25(欧米では30)を超えると肥満と定義されます。BMIは、計算が非常に簡単という点ですが、 小児に対しては成人の基準でそのままあてはめることはできません。というのも小児はつねに成長していますので、 日本では小児の肥満を「肥満度」標準体重にたいする過体重度を用いて一般に評価しています。
    肥満度=100×(測定体重−標準体重)÷標準体重 ※ 標準体重は、性別・年齢別・身長別の標準体重を使用する。
    で、表されます。これによって、肥満度が20%を超えたものを肥満とし、50%以上が高度肥満と定義されています。 肥満度による欠点1つは、計算がわずらわしい点です。もう1つは、世界基準はBMIなので、海外との議論や比較検討が できない点です。
  3. 肥満と肥満症
    肥満というのは、ただ太っているという状態です。肥満症となると、医学的治療が必要な肥満の状態を指します。小児肥満症の診断スコアを用いて、 5歳以降の肥満児で、合計スコアが6点以上の場合に肥満症と診断されます。
  4. 治療
    小児の肥満においても、治療の基本は、食事療法・運動療法・行動療法の3つです。 ただし小児の場合は、過度のカロリー制限は、成長に影響を与えるので要注意です。
  5. 今度の見通し
    生活習慣病の増加は、いまや国家的、世界的問題であります。思春期以降の肥満の治療は、本人の自覚がないかぎり、非常に困難を伴います。 そこで肥満治療のかぎは、幼児期の生活習慣にあるということです。

(Medical asahi 2006 10)

器質性疾患を伴った小児腸重積

小児の腸重積の5〜10%が原因疾患となる先進部病変を伴っている。先進部病変には、消化管ポリープ・メッケル憩室・ 重複腸管・悪性リンパ腫などの消化管の腫瘍性疾患などがある。また消化管壁が異常に腫脹したり、腸管蠕動運動が亢進したりする 疾患でも腸重積がおこりやすく、Henoch−Schonlein紫斑病、病原性大腸炎による出血性大腸炎などもこれに含まれる。 また、乳幼児がかかる感染性腸炎でも乳幼児は回盲部でのリンパ組織が発達しているため、腸の蠕動運動が亢進すると腸重積が発症しやすい。 このような器質性疾患を伴った小児の腸重積は、腸重積の整復後も異常所見が残るためその検索がとても大切である。原疾患を調べて再発を防ぐ ために数日間入院・経過観察することが必要である。
(医事新報 2006.09.16)

皮内反応

皮内反応は、アナフィラキシーショックを予測することにおいて有用ではないとの、日本化学療法学会からの提言を受けて、 2004年10月、厚生労働省は抗菌剤添付書の「使用上の注意」から「事前に皮膚反応を実施することが望ましい」 という文書を削除しました。添付書が現在の医療水準とみなされるので皮内テストをしなかったことが注意義務違反にあたることが 少なくなると考えられます。しかし、一方1998年10月に大阪高等裁判所で抗生物質を皮膚テストせずに投与した患者がショック死 したということを注意義務欠如と断定しておりますので必ずしも皮内テストが必要でないとも考えられます。労働省はは、但し書きとして「アレルギー暦を有するものについては、薬品の投与をアレルギーが起こりうる医薬品の投与を原則として行なうべきではないが、治療上必要と思われるときに皮内反応を事前に実施したあとに薬剤を投与する事例も存在すると考える。そして、このような事例における皮膚反応の有用性を否定するものではない。」と但し書きをつけて責任を逃れるようとしています。 したがって現実には皮内テストを行なうにこしたことは無いという結論になるのではないのでしょうか。
(医事新報 2006.09.16)

腸管出血性大腸菌を持続排菌する場合

出血性大腸菌の感染でもベロ毒素産生でなければ、いずれの血清型であろうとも原則として放置することが可能です。 ベロ毒素酸性菌であった場合には、周囲への2次感染を防ぐ除菌療法をするべきだと思います。小児の場合は、 ホスホマイシン40〜120mgが第1選択となり、5日ぐらいの経過投与を行い、内服終了後5日以上経ってから、 少なくとも1回できれば連続投与2回の糞便培養で菌が検出されないように、確認することが必要です。
Nikkei medical

幼稚園・保育園職員におけるサルモネラ菌種への対処

サルモネラ腸炎に対する抗菌剤は、成人の場合、ホスホマイシンよりもニューキノロン系のトスフロキサシンが最も 効果的です。投与期間は最低7日間必要で、その抗菌薬終了後、10日以上経ってから連続2回の糞便培養で サルモネラが検出されないことが重要です。なぜなら薬の投与終了直後には、サルモネラ菌の消失を見ていても1 週間後以上経ってからまた排菌が見られることがよくあるからです。このように、サルモネラ腸管感染症は、 抗菌薬を投与されていても除菌されにくいことがあり、むやみに抗菌薬を投与し続けると、かえって排菌が長期間持続して しまうことがあります。数回の抗菌薬投与でも、除菌できない場合は、反復するよりもいずれ3〜6ヶ月ぐらいで自然除菌されることが多いので手洗いを始めといた感染防止策を正しく実施すればそれだけで十分です。ただし、 食品を取り扱う人の場合には、除菌が確認されるまでは、食品に直接触ること業務は避けることを指導することが必要 です。
医事新報

乳幼児の喘息発作の管理

小さな乳幼児は気管による吸入、MDIによる吸入、あるいは内服のβ2刺激薬がうまく効かないケース がありますので、ホクナリン・ツロブテロールに代表されるテープ型のβ-2刺激薬や ロイコトルエン拮抗薬(オノンなど)が効果的であることが臨床の最前線でわかってきています。 テープ型のβ-2刺激薬は効果がそれほど強くないことに加えて、徐々に血中濃度が上がりすぎることも ないので、その副作用も出にくいと考えられます。そして、喘息症状が夜間寝ているときに徐々にひどくなる ことを考えれば、症状がそれほどなくても予防的に寝る前に寝る前にテープ型のβ2刺激薬を張っておくと いうことは、両親にとって、非常に安心感を与え、また実際に効果があるようです。 一方もともと喘息予防薬として、開発されている、ロイコトルエン拮抗薬は、意外と効果が早く 現れるということが、分かってきており、服薬しやすいということもあり、喘息が出そうだと思えば、 早めにβ―2刺激薬と共に処方されるケースがでてきています。その裏づけとして、ウイルス感染によって 喘息が誘発されるときに、気管支においてすでにロイコトルエンが集まり始めているということが考えられ 、発作前にロイコトルエン拮抗薬を飲むということは、理論的にも説明できるかもしれません。 しかし、ロイコトルエンが関係していない喘息も1・2割程度ある可能性もあるので注意する 必要があります。

B型肝炎の最近の傾向

B型肝炎ウイルスには、A〜Fまでの6つのサブタイプがあり、国や地域によって分布が異なって います。日本を含むアジアはBとC、欧米はA・D・F、アフリカはA・E・Dが主流です。 最近、日本では、欧米で多い遺伝子型AのB型肝炎ウイルスが広がりつつあることです。これは、 母子感染ではなくて、性交渉で感染しているのが原因です。この遺伝子型AのB型肝炎ウイルスは 急性肝炎の後、10%程度慢性化し肝癌の発生につながりますので、B型肝炎の治療方針を決めると きには、B型肝炎のタイプ別を見極めることがとても大切であります。そして、病気の進行とともに タイミングを逃さず、抗ウイルス薬を、投与することがとても重要です。
(日経メディカル2006 6)

E型肝炎

E型肝炎は、A型肝炎がカキなどの魚介類によって感染するのに対し、ブタやイノシシなどの動物の肉や内臓を食べたことが原因で起こる肝炎です。 E型肝炎は、A・B・C型肝炎と比較して多くありませんが、ここ数年増えてきているのが目立ちます。 以前はE型肝炎は輸入感染症と考えられていましたが、最近のE型肝炎は国内で感染したのだろうと思われるケースが 増えてきています。E型肝炎の症状は、他のウイルス性肝炎と同じような症状ですので、診断するためには生肉の 摂取暦を確認することがとても大切です。また、海外渡航暦も確認することが必要です。注意すべきは、 患者が生肉を食べていなくても、焼いた肉が良く焼けていなかったり、生肉をつまんだはしを使って 焼肉を食べたりしたことが原因になった可能性もあります。E型肝炎の診断はHEV遺伝子と 血清HEV−IgM抗体を検査すことによって診断できます。
(日経メディカル2006 6)

インフルエンザにスタチンが有効

高脂血症患者に使われているHMG-CoA還元酵素阻害薬「スタチン」がインフルエンザに有効であることが分かった。 アメリカ感染症学会のインフルエンザ大流行対策委員会の委員であるフェドゥソン博士は、 「30万人以上の急性心筋梗塞患者を対象とした疫学的研究からスタチン投与を続けていた患者または 入院後24時間以内にスタチン投与をうけた患者では非投与患者と比べて、死亡率が3分の1以下に低下したことが示された」と述べた。 しかし、博士はまたスタチンのインフルエンザへの予防はまだ単なる概念に過ぎないことを認識することが重要である、 そして今後の研究の必要性を強調している。もし、スタチンがインフルエンザに有効ならば、 ワクチンほど有効ではないにしろスタチンという薬が大量にいくらでも手に入るということと、 タミフルに比べて非常に安いということで今後検討の価値があるという。
メディカルトレビュー8月17日号

成人の溶連菌感染症

成人のA群β溶連菌による溶連菌感染症は、子どもが溶連菌に罹ったときに時々みられる病気です。子どもの場合、発症後2〜3週間して、 尿検査をすることが一般的ですが、大人の場合もやはり同じ時期に尿検査をすべきなのでしょう。いわゆる急性溶連菌感染後糸球体腎炎 (PSAGN)は、子どもの場合その予後は比較的良好であり自然に治癒することが多いのですが、成人の場合は子どもの場合に比べ 遷延する症例が多く、中には慢性腎不全に進む場合もあります。従って大人の溶連菌感染症後の糸球体腎炎については、尿検査をきちんとして、 異常を認めたならば子どもの場合以上に、尿検査が正常化するまで注意・観察する必要があります。
以上 日本医事新報社Q&A 8月12日から

川崎病の最近の話題

川崎病は発見から40年たち、一時は減少傾向にあったものの最近また増加してきている。治療法こそガンマグロブリン療法が確立されたこと により、非常に改善し、死亡率も低下し冠動脈瘤などの後遺症を残す例も5%以下に下がったが、最近新しい問題が出始めている。 一つは川崎病の初期のときに後遺症を残した患者さんが、50歳を超えるようになってきており、これを小児科医が診るのか、 あるいは内科医が診るのかが問題になってきているということ。その2、今のガイドラインによれば、急性期に一時、 冠動脈流を認めても30病日までに正常化すれば、経過観察は5年まででよいことになっているがはたしてそれで十分なのか。 さらに退縮群つまり冠動脈瘤形成を残したけれど発症後1年までに正常化したもの。これらの中でも数年たつと退縮した部位の周辺に 狭窄病変を起こしてくるという報告もあり、今まで中学校までで経過観察を打ち切ったことも多かったものの中にその後一生観察を必要とする ケースも含まれる可能性が出てきている。
  Nikkei medical 2006 7 から